SPORT x ART FESTIVAL 2018 新豊洲オータムフェス

SPORT x ART FESTIVAL 2018
新豊洲オータムフェス

REPORT#016

トークショー「スポーツ・アート・食で創る豊洲の未来」

2018年10月27日、10月28日に開催されたSPORT×ART FESTIVAL 2018「新豊洲オータムフェス~頑張る人に、いいエネルギーを。~」。27日(土)には「スポーツ・アート・食で創る豊洲の未来」と題したトークショーが開催されました。
ゲストは豊洲でデジタルアートを体験できる超巨大没入空間「チームラボ プラネッツ TOKYO」をオープンしたチームラボ代表の猪子寿之氏と、東京・西麻布にあるレストラン「L‘Effervescence(レフェルヴェソンス)」の生江史伸シェフ。司会進行は、元陸上競技選手で400mハードルの日本記録保持者でもあり、スポーツコメンテーターの為末大氏です。「スポーツ」と「アート」、「食」の分野で今までにない体験を提供したいという共通の思いを持つ三人が、五感をテーマにそれぞれの分野の状況や変化などについて語り合いました。

身体と世界の境界線をなくす、
別世界に没入して心身を解放する。

まずはそれぞれが今どのような活動をしているかの紹介からスタート。チームラボは豊洲だけでなく、お台場にも今年ミュージアムをオープンし、大人から子どもまで楽しめるデジタルアート空間をさまざまな場所で創られています。世界最大のアート・デザイン・建築のデジタルメディアdesignboom(デザインブーム)で、「2017年のアートインスタレーション(TOP 10 art installations of 2017)」で1位となった佐賀県の武雄にある御船山楽園の「チームラボ かみさまがすまう森」のプレゼンテーションを行いながら、「自分の身体と世界の境界線をなくす体験ができる空間を創り出したかった」と、アート制作の根底にある思いを述べられました。

生江氏がシェフを務める
「L‘Effervescence」は“未知の感覚と出会えるような場所でありたい”という思いでオープン。慶應大学法学部を卒業したのち、会社員としてサラリーマンの道を歩むのではなく食の世界を目指した生江シェフ。日本各地の食材と世界各地の食材を融合し、お互いの良さを引き出した料理が皿の上、味わう人、ダイニング全体で渾然一体となるような体験を創り出す。

「僕らのやっているようなファインダイニングは、この世に必要のないものかもしれませんが、五感で食を味わうということはこの世界を味わっていることと同じなんです。いつもの生活の中では得られないような気づきを与えたり、別世界に没入することによって心と身体を解放する。それがファインダイニングの役割でもあるんです。」

身体と世界の境界線をなくす、別世界に没入して心身を解放する。猪子氏と生江シェフの活動は、分野は違えどどこかに共通点を感じます。そして、海と山に囲まれた日本という国の素晴らしさ、そこで生まれる食の豊かさのへと話は広がりました。

日本の食の豊かさを守ることは、環境を守ること。

世界各地でどの国の料理も口にすることができる世の中にあって、今辺境の地の食が注目されていると生江シェフは言います。

「例えば日本料理もその中の一つなのですが、『だし』に目を向けてみるとそのルーツは非常に興味深いんです。京都の高級料亭のだしに使用している昆布は日本の最北端の北海道、鰹節は日本の最南端の鹿児島でとれた最高峰のものを一つのお椀の中で融合しています。それが日本料理の“骨”なんです。東京や京都、といった局地的なところでできたのではなく、さまざまな場所でとれるものを融合させて高いステージに上げたところに自分たちの文化の源泉があるということに実はあまり気づいていない。多様なものが集まって、クラッシュして残ったものが今に受け継がれて来ている」

真の日本料理とはなんなのか、昨今は長崎の五島列島やアイヌ民族が口にする郷土料理なども日本料理として見直す動きが出てきているそうです。

「日本人はすぐに日本料理を自慢したがりますが、どうなのでしょうか」との見解を示したのは猪子氏。

「日本はたまたま自然環境に恵まれているので、日本で食べる海産物は美味しい。逆に海外で食べる日本料理は美味しくないと感じることが多い。フレンチとか四川料理ってどこで食べても美味しいですよね。ということは、日本料理がすごいのではなく、日本の食材が素晴らしいだけでは?」と独特の考えを展開。その素晴らしい食材を生み出す豊かな自然を守るために、もっと環境のことを考えていくことが大切だとも述べられました。

美とは何か? アートとは何か?

「身体で感じる美とはなにか?」と為末氏によって投げかけられたこの問いかけに、生江シェフは食と脳の知覚の関係性のエピソードを交えてお話しされました。

「人はわずかに、まずい、臭い、苦いなどといった味覚を食事の中に混ぜることでより官能値が上がると言われています。普通に美味しいものを食べた時よりも官能値が上がる。なぜなのかはわからないのですが、それと同じように、ただ美しいものよりもその中に毒を孕んでいるものに人は美を感じるんじゃないかと思います。」

10皿以上のコースで展開される生江シェフのレストランでも、そういったバランスに配慮して内容を組み立てるそうです。

全身で美の世界にダイブするような作品を制作している猪子氏も、美はいまだに謎だと語ります。

「美しいとは何かがわからないですね。そもそも人間はなぜ花を美しいと思ったのか、自分と相反するもの、遺伝子交換ができない最も対極にあるものに美を感じたのだろうか。でも、もし美という概念がここまで拡張していなかったら、人類はとっくに滅びているかもしれないとすら思う。だから僕もアートを通して今まで体験したことのないような美を生み出すことで、これから先の人類の未来をより良いものに変えていけたらいいなと思っているんです。」

豊かな土地に息づくエネルギーを循環させよう

「食べることは分かち合うことなんです。五感を通してエネルギーを交換し合うのがアートなら、誰かとエネルギーを分かち合う食もアートと言えるかもしれませんね。豊洲は市場の移転でこれからますます活気付くでしょうし、食も人も豊かな街になってほしいですね。そして人間は日々豊かな自然のエネルギーを受けとって生きているということが、より多くの人に伝わっていくことを願っています」と生江シェフ。

東京・銀座のレストラン「佐賀牛 Sagaya 銀座」内の「MoonFlower Sagaya Ginza, Art by teamLab」では、日本の四季を感じながら新しい食事体験ができるという、まさに食とアートを融合したインタラクティブな空間を創造したチームラボ。世界中のキュレーターからミュージアムの誘致を求められている。

食の未来とアートの未来を切り拓く二人のアーティストのお話には、忙しない日常をおくるたくさんの人々に届けたい言葉が溢れていました。今ある恵まれた環境に感謝し、その環境を守ることにエネルギーを注ぎながら生きていく。そのエネルギーが循環することでより良い未来が続いていくのではないでしょうか。

「新豊洲オータムフェス」の詳しいレポートはコチラから!

※随時更新していきます。

頑張る人に、いいエネルギーを。