SPORT x ART FESTIVAL 2018 新豊洲オータムフェス

SPORT x ART FESTIVAL 2018
新豊洲オータムフェス

REPORT#015

トークショー 「走りを極める」

27日(土)の午後は、女子100m、200mの日本記録保持者でもある陸上競技の福島千里選手(セイコー社員)とパラ陸上競技の佐藤圭太選手(トヨタ社員)によるトークショーが開催されました。司会進行は元陸上競技選手で400mハードルの日本記録保持者でもあり、スポーツコメンテーターの為末大氏。「走りを極める」をテーマに、お二人が速く走ることに対してどのような姿勢で挑んでいるか、速く走るにはどうすればいいかといったトークが繰り広げられました。

速く走る秘訣。義足にヒントが?

まずは、「最近どう?」との為末氏の質問に、アジアパラを終えたばかりの佐藤選手は「今はほっと一息美味しいものを食べながら休養の日々です」。福島選手は、「北海道から上京して1年が経つのですが東京の満員電車に驚きを隠せない日々です」とコメントし、会場を和やかなムードに誘いました。

ふだんは穏やかでのんびりとしたタイプのお二人ですが、トラックの上では世界を股にかけて戦うアスリート。ずばり、「速く走る秘訣とは何か?」のトークテーマで佐藤選手は、「足がなくても僕みたいに速く走ることができる人と、そうでない人がいる。もしかすると足の速さに足部分は関係していなくて、胴体部分の力が大きいじゃないのかと思うんです」と意見を述べられました。また、自身の義足がどんな素材で作られているのか、昔の義足と比べて性能がどのくらい良くなったかについての興味深いお話も。福島選手は「早く走ることができるかどうかは、小さい頃からのクセが肝心。良いクセを早い時期から身につけておくと、その後の走りにも大きく影響すると思う」と自身の幼少期のクセにも触れながら話しました。幼少期の走り方のクセはその先長く続いてしまうことから、早めに修正してよりベストなクセを身につけることをおすすめしていました。

「スタートを切ってからゴールまで速度を落とさずに走るには?」と為末氏の質問に佐藤選手は、「気を張りすぎずに、リラックスした状態で、かつ、スタート時と同じように走ると意外とタイムが伸びるんです」と、プロフェッショナルらしい意見。「トップレベルの陸上選手の足首と膝の関節はほとんど動かない。バネのように足が地面に反発するような動きで走っているんです」と為末氏の解説も付け加えられ、健常者の足と義足が実は同じような動きをしているとの専門的なエピソードも添えられました。一生懸命足を動かすのではなく、「受け身」で足のバネのたわみに任せて走ることで速度が増すのだそうです。

次に為末氏は福島選手に「いいスタートの違いと悪いスタートの違いは?」と質問を投げかけました。「いいスタートを切れた時は、絶妙なところで加速が増す。悪いスタートは、途中で身体が落ちてしまって、本来乗るはずのスピードに乗り切らないんです。トップスピードに乗るためにはスタートがとても大切。とはいえ一番大切なのはゴールなので、結果的に早くゴールできた時がいいスタートだった、ということになりますね」。車に例えるとスタートは、アクセルをぎゅっと全開に踏む感じだとも表現。

「速く走る」を突き詰めると、人生哲学にたどり着く?

「うまくいかない時の乗り越え方」について佐藤選手は、「陸上競技って優勝しないとうまくいかないってことになると思うんですね。でも毎回優勝できないからといって落ち込むのではなく、自分の走りを振り返ってひとつでもハッピーを見つけていこうとしています」。優勝はできなくとも、この部分は良かった、ここは練習の成果が出た、といったポジティブシンキングが次に繋がるエネルギーになっているという。自分に希望を持って、心を健全に保つことの大切さを教えてくれました。

福島選手は、「この先にもっと辛いことがあるかもしれないと思って、今を乗り越える」というアスリートらしい強い言葉を残してくれました。「人間は一日一日、後退することはないと思うんです。今日頑張ったことは明日に活きると思いますし、少し失敗しても大きく見れば、伸びている部分の方が大きいかもしれない。この先もっと辛いことがあるかもしれないから、今くよくよしている場合じゃない!と頑張っています」

二人の熱い言葉を受けて為末氏は、自身が現役の頃を振り返って、「人生は物語のようだ」と考えていたことを思い出されました。
「これは僕の長い人生の物語の一場面。今の困難はより良い物語を作る上でのワンシーンに過ぎない。だからそれも受け入れようとしていましたね。BGMはロッキーのテーマでした(笑)」

「早く走るにはどうしたらいいですか?」と、5歳の観客からの質問に佐藤選手は「とにかく今は走ることを楽しんでほしい。ダンスをやってリズム感を養うのもおすすめですよ」とアドバイス。福島選手は「すごく高いところのものを目指してジャンプしたり、すごく早いものに追いつこうとしてみたり、前や上を目指すことへの意識を今から身につけること」とアドバイス。

ほかにも、団体のスポーツと比べて個人種目は孤独を感じるか? どうやってモチベーションを保っているのか、といった質問も。もともとサッカーをやっていた経験を持つ佐藤選手は、陸上は団体スポーツと比べて心細さはあるものの、自分自身と向き合う時間が増えたことをプラスに捉えていると語りました。「自分がどういう風になりたいのか、どこを目指すのか。心の中での独り言が増えましたね」。足がなくても走ることができる。15歳で片足をなくした佐藤選手がパラスポーツを通して伝えたいのは、障がいを持つことはネガティブなことではないということ。「生きていく上で足がないことは問題にはなりません。より多くの方にパラスポーツを知って楽しんでほしいと思います」。

「スポーツの楽しさはライブで鑑賞することでよりその魅力が深まる」と福島選手も最後にメッセージを残してくれました。「世界中のアスリートの戦う姿を東京で見られる機会がもう少しで訪れます。ぜひたくさんの方に東京2020オリンピック・パラリンピック大会を応援しに来ていただきたいです」

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※随時更新していきます。

頑張る人に、いいエネルギーを。