REPORT#009

親子料理教室 ~片手でクッキング体験~共生社会について考えるきっかけに
「片手でクッキング親子料理教室」

 すべての人がいきいきと暮らす共生社会について考えるきっかけにと、「片手でクッキング親子料理教室」を開催。ケガや病気などで片手が使えないときでも楽しく美味しい料理ができる調理の工夫やアイデアを紹介し、片手でクッキングを親子で体験していただきました。

親子料理教室

 まだ料理に慣れていない子どもたちもいるので、包丁を持つなど調理の基本を学びながら、片手だけを使った調理にも挑戦。子どもも大人も真剣な表情で調理をして、出来上がった料理を食べるときにはたくさんの笑顔が溢れていました。

片手で卵を割る調理法にチャレンジ。
卵を落として割るというのが子どもたちには新鮮だった様子。

缶詰を片手で開けるのは、子どもたちには難易度がちょっと高め。でも、「できた!」と言うときの表情は本当に嬉しそう!

サラダに使うオリーブオイルを片手で計量。子どもたちはどの調理法も真剣に取り組んでいるのが印象的。

グリル野菜を片手でキッチンバサミを使って切るころには、キッチンには美味しそうな香りでいっぱいに。

完成したらみんな一緒に「いただきまーす!」。
思わずみんな笑顔になって、あっという間にペロリと完食!自分で作るといつもの何倍も美味しいみたい!?

Today’s Cooking...
今回は、ツナとトマトソースのペンネ~グリル野菜添え~、パッチョ農園の野菜を使ったサラダ、フレンチトースト&手作りブルーベリージャムを作りました。

調理のコツ 4つのポイント

 障がいのある方もない方もみんなが快適に楽しく暮らせる社会のために始まった片手でクッキング。
便利な調理グッズもありますが、工夫次第で自宅にあるものを使って片手で調理することができます。代表的な調理のコツを4つご紹介します。

1. 卵を片手で割る方法

片手で卵を割る方法は他にもありますが、今回は高いところから卵を落として割る方法をやってみます。

■手順1

少し大きなボールを用意して、下に滑り止めのマットを敷き、ボールの中に卵を落とします。

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卵を真横に持って、30cmくらいの高さから落とすと綺麗に割れます。
卵を落とすのが低すぎても割れないですし、高すぎても殻がバラバラになって大変です。

■手順2

ボールから割れた殻を取り出して、かけらが残っていないか確かめます。
もし残っていたらスプーンなどで取り除きます。

動画でご覧いただけます

2. 缶詰の開け方

■手順1

まず、缶詰を滑り止めマットの上に、タブ(引き金)が手前にくるように置きます。

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缶詰を置く台の高さは低めのほうが力を入れやすいです。

■手順2

片手で缶詰のタブを起こす。向きを変えて親指で動かないように押さえつけながらタブを引き半分まで開けます。

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親指で蓋を押すようにして、タブを内側に落とすと引きやすいです。特に親指を立てると力が入りやすくなります。

動画でご覧いただけます

3. 調味料のはかり方

置いたまま計れる底が平らな計量スプーンがありますが、一般的には計量スプーンでもトレーを使って計ることもできます。

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トレーなどの上に置くと計量スプーンが水平になり、置いたままでも調味料を正確に計ることができます。

動画でご覧いただけます

4. 野菜の切り方

食材は包丁を使わずキッチンバサミでも簡単に切ることが可能です。

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食材をまな板に置いたままキッチンバサミで切ります。
まな板は滑り止めマットの上に置くと切りやすくなります。

片手でクッキング冊子

ケガや病気で片手しか使えない状況になったときでも、調理ができる工夫や、工程がシンプルな調味料で作れるレシピを紹介しています。
無料でダウンロードできるので、ぜひ皆さんも片手でクッキングを試してみてください。

2018年2月に横浜市総合リハビリテーションセンター作業療法士の薮崎さや子さんにご協力をいただき発刊された冊子『片手でクッキング』。
薮崎さんに、込めた思いや障がい者と健常者が共生していく社会についてお話を伺いました。

横浜市総合リハビリテーションセンター
作業療法士 薮崎さや子さん

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障がいを持つ方がいきいきと働く
「パッチョ農園」からの野菜を使って

共生社会の実現に向けて、今春、障がいを持つ方も安心して働くことができる「パッチョ農園」がオープンしました。
今回の親子料理教室では、パッチョ農園で収穫した新鮮な野菜を調理するとともに、東京ガスの取り組みに理解を深めていただきました。

世の中にはいろいろな人がいる、
それを親子で考えるきっかけに

東京ガス株式会社
東京2020オリンピック・パラリンピック推進部
課長   原口 聖名子

 東京ガスは2020年以降も、年齢、性別、国籍、そして障がいの有無に関わらず、誰もが快適に暮らせる共⽣社会の実現に向けた様々な取組みを実施しています。
「⽚⼿でクッキング」は、そんな共⽣社会の実現の⼀つとして、ケガや病気によって⽚⼿でしか調理が⾏えない状況でもちょっとしたアイデアで楽しく料理ができるようにと考案しました。

 今回の「⽚⼿でクッキング親⼦料理教室」は、⽚⼿で調理する難しさを知る⼀⽅、⼯夫次第で楽しく料理ができること。そして、世の中にはいろいろな⼈がいて、その⽅に対してどんなサポートができるかなど、親⼦で考えるきっかけになればとの思いで開催しました。今後もさまざまなイベント等を開催しますので、ぜひ皆さんも参加してみてください。

頑張る人に、いいエネルギーを。

interview

多くの方が豊かな暮らしを送れる未来を実現するため、東京ガスは共生社会の実現に向けたさまざまな取り組みを行っています。東京ガスのオリンピック・パラリンピック推進部と、「食」情報センターが共同で作成した『片手でクッキング』は、片手でも楽しめる料理体験プログラムです。この人気プログラムを実施するにあたり、ご協力いただいたのは横浜市総合リハビリテーションセンター作業療法士の薮崎さや子さん。今回は、薮崎さんに2018年2月に発刊された冊子『片手でクッキング』に込めた思いや、障がい者と健常者が共生していく社会についてお話を伺いました。

薮崎さんの所属する社会福祉法人横浜市リハビリテーション事業団では冊子『片手でクッキング』の監修をされていましたね。こうした取り組みを始めた経緯を伺えますか?

薮崎:

わたしは普段は、主に身体機能の改善を目的としたリハビリテーションに携わっています。2010年度から麻痺の方のための料理教室を自ら企画、運営しているうちに、東京ガスさんに声をかけていただいたのが最初のきっかけです。わたしには診療という本業があるので、自分からこの活動を広めることはなかなかできないのですが、東京ガスさんの方で積極的に展開いただいています。私達の開催している教室は、障がいのある方が対象ですので、こうして冊子にまとめてくださったり、料理教室を開いてくださったり、障がいのない方のあいだで広がる機会を提供いただくのはすごく嬉しいことですね。

片麻痺は誰もがなる可能性のある症状だと伺いました。どのような原因からなることが多いのでしょうか?

薮崎:

片麻痺を発症する主要因は生活習慣病などを起因とした脳血管障がいです。高齢の方の発症率が高いのですが、40~50代の現役世代でも生活習慣の不全からなることはあります。外食が多かったり、コンビニのお弁当ばかり食べていたり、食習慣を重要視しない方が発症することも多いです。「食」に関心を持つだけで健康を考えるきっかけにもなりますので、日々の食事に興味を持ってもらいたいですね。やっぱり、食べたものがその人の身体をつくるので。

『片手でクッキング』のレシピを考案される際、どのようなことを意識されていたのでしょうか? 通常のレシピとは違う点があれば、教えてください。

薮崎:

簡単で美味しく、基本的な調理技術を体験できるレシピ、作っていて楽しい、そういうレシピを意識しました。そのため、片手でなくても、お料理初心者の方にとっても作りやすい献立になっています。考案する献立にはいくつかのルールを設けていて、主に「栄養のバランスが取れていること」「味付けが簡単にできること」「単純な工程」「自宅で再現が可能」などがあります。

体験された方からの反響で、印象にのこっているものはありますか?

薮崎:

やはり、障がいを抱えてしまったことで、落ち込んだり、塞ぎ込んでしまう方はいらっしゃるんですよね。そんな時に、料理は趣味にするのにとても適していると思うんです。一般のご家庭には調理用具が揃っていますから、他の趣味のように特別な道具を買わずにチャレンジできますし、上達するのが目に見えるので「成長する実感」を得ることができる。『片手でクッキング』がきっかけになればいいんです。自分でもできるんだということを実感していただいて、料理じゃなくても、何かを始めるきっかけになってくれればと思いますね。

『片手でクッキング』で使用されている道具には、どんな特徴や工夫があるのでしょうか?

薮崎:

ユニバーサルデザインを基本にしているので、見た目もおしゃれで、障害のある方に限らず、便利で使いやすいものが多いですね。例えば、滑り止め用のシートなんかは料理をされる全ての方みなさんにとって便利なものだと思います。

薮崎:

例えば、普段は意識しないですが「固定する」というのは料理の動作の基本です。健常の方は腕や指を使って「固定する」「動かす」といった別々の役割を同時に行っているのですが、片手では固定することが困難なので、それをサポートする道具は多いですね。

また、スプーンで掬いやすいよう内側に反り返った形状のボウルなんかは、お子様にも喜んでいただけるアイテムだと思います。百円均一ショップで手に入れることができるのも多いので、立ち寄った際は是非のぞいてみてほしいです。スタッフの間でも「こんなに便利なものがあったよ」などと、話題になることが多いです。

『片手でクッキング』を見ながら障がいのある方と一緒に料理をする際、健常者の方々が気に留めるべきポイントはありますか?

薮崎:

サポートしすぎ、助けすぎることはよくありませんね。その塩梅は障がいの重さやその方々の関係性にもよるので一概には言えません。そのため、私がおすすめしているのは、まず自分で体験してみること。一度片手で調理をしてみれば、全く違った世界が見えてきます。「ああ、これがやりにくいんだな」とか、「こういう動作が難しいんだな」とわかる。何をするかの前に、相手の目線に立ってみるのが大事だと思います。

それでは最後に、薮崎さまが「片手クッキング」を通じてどんな未来を実現したいのか教えてください。

薮崎:

『片手でクッキング』のレシピは片麻痺の方以外にも読み物として楽しく、活用出来るものです。今はまだこうした体験会のみですが、このような機会がどんどん増えていくと、将来的にはどこでも、誰でも『片手でクッキング』を体験できるようになるといいと思っています。自宅から歩いて通えるような距離で、健常の方も障がいのある方も一緒に料理を楽しめる施設がある。そんな世の中になって欲しいです。